次に、AI同士が会話できるA2A(Agent-to-Agent)プロトコルがあります。Googleが作ったもので、代理間の通信やタスクの引き継ぎを標準化しています。AnthropicもMCP(Multi-Chain Communication Protocol)をリリースし、AIに接続ツールやコンテキストデータ取得のインターフェースを提供しています。これを基に、GoogleはAP2支払いプロトコルも公開し、AIが必要に応じてサービスを呼び出し、自動的に支払いを行えるようにしています。従来の支払いとx402の両方に対応しています。
27年間眠っていたHTTP 402が復活:AIはどのようにステーブルコインを使って自動決済を行うのか?
想像してみてください:あなたのAIアシスタントがインターネットをサーフィンしていて、課金が必要な研究レポートに出会ったとします。以前なら支払いページにジャンプしてクレジットカード情報を入力したり、アカウント登録をしたりしなければなりませんでした。今?それをウォレットからUSDCの少額を引き落とすだけで、秒で解決し、作業を続けられます。
これがx402プロトコルがやろうとしていることです。
忘れられていた「ボタン」が突然役立ち始める
1997年、HTTPプロトコルにはステータスコード402が予約されていました。意味は「Payment Required」—内容を見るには支払いが必要、というものです。しかし、その時点ではどう実現すればいいのかわからず、この機能はまるで未完成のコンセントのように、30年近く放置されていました。
転機が訪れたのは、ステーブルコインが成熟し、L2(レイヤー2)が送金コストを数セントに圧縮し、さらに重要なのはAIエージェントの爆発的な普及です。これらの自動化プログラムはさまざまなAPIを呼び出し、有料データベースにアクセスし、計算資源を購入します。彼らはフォーム入力や人間の承認を待つ必要はなく、迅速に動きたいのです。
ある大手取引所はこのチャンスを見て、長らく眠っていた402ステータスコードを再活性化し、x402プロトコルをリリースしました。コアのロジックはシンプルです:AIが有料コンテンツにアクセスすると、サーバーは402ステータスコードと受取アドレスを返し、AIのウォレットは自動的にチェーン上で送金を完了します。途中でページをジャンプしたり登録したりする必要はありません。
聞こえは簡単ですが、システム全体を動かすには、底層のプロトコルから上層のアプリケーションまで一式の再構築が必要です。
プロトコル層:AIに「ウォレット+口座+信用記録」を装備させる
x402は単体の標準規格ではなく、むしろ複合的なプロトコルパッケージです。3つの課題を解決します:AIはどうやって話すのか、どうやって支払うのか、どうやって信頼性を証明するのか。
最も重要なのはもちろんx402プロトコル自体です。HTTP 402をベースに設計されており、AIが有料リソースにアクセスすると、サーバーは直接支払い要求を返します。AIはUSDCのようなステーブルコインを使ってチェーン上で送金し、登録やページ遷移は不要です。要するに、「価格を見る→QRコードで支払う→コンテンツを受け取る」、これだけです。
次に、AI同士が会話できるA2A(Agent-to-Agent)プロトコルがあります。Googleが作ったもので、代理間の通信やタスクの引き継ぎを標準化しています。AnthropicもMCP(Multi-Chain Communication Protocol)をリリースし、AIに接続ツールやコンテキストデータ取得のインターフェースを提供しています。これを基に、GoogleはAP2支払いプロトコルも公開し、AIが必要に応じてサービスを呼び出し、自動的に支払いを行えるようにしています。従来の支払いとx402の両方に対応しています。
技術的なキーポイントはEIP-3009の拡張です。これはイーサリアムの標準で、ユーザーが署名を使ってトークンの転送を許可でき、ガス代を支払わずに済む仕組みです。これにより、AIのウォレットにETHがなくてもUSDCだけで支払いが可能になります。Facilitator(後述)を通じてガス代を立て替え、ブロードキャストも行います。
また、進行中のERC-8004は、AIのチェーン上でのアイデンティティと信用システムを構築します。実行履歴や信頼スコアを記録し、サービス提供者はこの情報をもとにAIの信頼性や悪意の有無を判断できます。
まとめると、プロトコル層は「言語+通貨+信用」の3つの要素を構築し、AIが誰も見ていない状態でも自主的に取引・協力・支払いを行えるようにします。これがエコシステムを動かす第一歩です。
インフラ層:誰がこれらの支払いリクエストを処理しているのか?
プロトコルはルールを定めますが、実際に支払いを動かすのはインフラです。リクエストの検証や決済、サービスの調整を担当します。
まずはCloudflareです。世界最大のCDN企業であり、主要な取引所と共同でx402基金会を設立し、自社のノードや開発ツールにプロトコルを組み込んでいます。Cloudflareはグローバルな配信ネットワークだけでなく、「先に使って後で支払う」仕組みもサポートしています。AIはまずリソースを受け取り、その後チェーン上で決済を完了します。
**中心的な役割はx402 Facilitator(支払い集約者)**です。名前は抽象的に聞こえますが、実際は「代金支払い+決済+ブロードキャスト」の中間業者です。ユーザーやAIがHTTP 402リクエストを送ると、Facilitatorがガス代を立て替え、取引をまとめてチェーンに送信します。全てEIP-3009標準を使い、AIは一度USDCの引き落としを許可すれば、コインを持っていなくても署名だけで支払いが完了します。これにより、チェーン上のやりとりが大幅に簡素化されます。
データを見ると、ある大手取引所が最大のFacilitatorで、135万件以上の取引を処理し、8万人の買い手をカバーしています。PayAIは次点で、SolanaやBaseなど複数のチェーンで活発に活動し、合計28万ドルの取引額を記録しています。ユーザー数は一部の大手取引所を超えることもあります。その他、X402rs、Thirdweb、Open X402なども市場シェアを争っています。
さらに、x402専用の「ネイティブ決済ブロックチェーン」も登場しています。代表的なプロジェクトはKite AIです。これはx402支払いの原語を完全に底層に組み込んだLayer1の一つで、複数の著名な投資機関から資金を得ています。支払いの検証はFacilitatorが行いますが、Kite AIは取引の実行と決済の環境を提供し、代理が標準化された署名命令を使って自動的に支払いを開始・受領・照合できる仕組みです。
DePIN(分散型物理インターネット)分野のPeaqも重要な役割を果たしています。これは機械経済に特化したパブリックチェーンで、x402をネイティブにサポートし、デバイス間や代理間の自動支払いと決済を可能にしています。
x402の協調層の代表はQuestflowです。開発者はここに代理タスクを公開し、価格を設定し、チェーン上で決済を完結させることができます。すでにVirtualsやGateなどのプラットフォームと提携しています。
また、AurraCloudやMeridianはx402プロトコルのマルチチェーン決済やホスティングサービスを提供しています。
要するに、インフラ層は「リクエストの発信方法」「資金の安全な受け取り」「異なるチェーンへの迅速な展開」の3つの課題に取り組んでおり、これが支払いシステムの本格稼働を左右します。
アプリケーション層:実際にx402を使っているのはどれくらい?
プロトコルとインフラが整っても、アプリケーション層は動き出しているのでしょうか?現状は――導入プロジェクトはまだ少ないです。
全体として、x402のアプリケーション層はまだ模索段階です。機能的なプラットフォームは始まったばかりで、規模の経済は形成されていません。誰が最初に、実用的で支払い可能な、再利用できるプロダクトを作るかに注目です。
Memeブーム:PINGたちの盛り上がり
x402の概念が盛り上がる中、市場には「叙事詩的」なMemeプロジェクトも登場しています。最も代表的なのはBaseチェーン上で発行されたPINGです。リリース当日に時価総額は一気に千万ドルを突破しました。
PING以外にも、「PENG」や「x402」などのトークンがコミュニティ内で出現しています。これらのMemeは現段階ではプロトコルのコアを構成しませんが、関心や熱気、資金流動性を高める役割を果たしています。
実現への四つのハードル
x402のコンセプトは注目を集めていますが、実際に普及させるにはいくつかの課題があります。
第一に、実用的なプロダクトが不足していること。現状、多くのプロジェクトはテストネットや概念検証段階で、ユーザー体験も粗いです。
第二に、技術スタックが複雑で統合コストが高いこと。x402は新しいプロトコルを伴い、支払い、署名、代理通信など複数のモジュールを組み合わせる必要があり、開発者のハードルが高いです。
第三に、規制リスクです。「アカウント不要・ページ遷移不要」の支払いは効率的ですが、従来のKYC/AMLを回避しているため、特定の地域では規制上の問題が生じる可能性があります。
第四に、ネットワーク効果がまだ形成されていないこと。支払いプロトコルの核心はエコシステムの協調ですが、現状は接続しているサービスやプラットフォームが少なく、エコシステムの循環ができていません。
まとめると、x402は「大規模な普及」までにはまだ距離があり、技術面・実用面の両面で多くのハードルを突破する必要があります。
参加のチャンスはどこに?
長期的な視点では、x402のチャンスはインフラや重要なプラットフォームの展開にあります。
まずは基盤となるチェーンとインフラです。x402はEIP-3009やERC-8004などのEthereumエコシステム標準に依存しています。現状、最も実用的なのはBaseチェーンで、ステーブルコインのエコシステムが整っており、開発環境も良好です。これにより、主要なプロダクトが早期に生まれる可能性があります。Solanaも高速支払いに適しており、エージェントのマイクロトランザクションに向いています。
次に、ネイティブ決済ブロックチェーンのKite AIや支払い集約プラットフォームです。例えばPayAIやMeridian、AurraCloudなどです。これらは支払いの検証やガス代の負担、API連携を担い、標準的な入り口となることで価値が拡大します。
トークン側については慎重に。現状、x402関連のトークンは小規模で変動も激しく、多くは叙事詩的なミームに過ぎません。実際の支払い導入やプラットフォームの利用価値を持つプロジェクトに注目すべきです。
業界の大物たちはどう見る?
市場の意見は分かれていますが、一線のビルダーやインフルエンサーの見解も重要です。
Haotianは、「今のx402ブームは多くがミームの炒作によるもので、しかし真の『主菜』は技術の実装とエコシステムの形成にある」と指摘しています。