執筆者:キャシー
2026年2月26日、Blockは第4四半期の決算を発表し、株価はアフターマーケットで23%以上急騰した。時価総額は一夜にして約24億ドル増加した。
同じ日、4000人の従業員に退職通知が届いた。
この対比こそ、今この時代の最も残酷な現実の証左である。
01 一通の手紙がシリコンバレーを揺るがす
このすべてを引き起こしたのは、一通の手紙だった。
その日、Blockの共同創業者ジャック・ドーシーは全従業員に向けて公開書簡を送った。彼はこう書いている:「インテリジェントツールは、企業の設立と運営の意味を変えた。規模を大きく縮小したチームでも、私たちが構築しているツールを使えば、より多くの仕事をより良くこなせる。」言外の意は明白:会社は少人数で高い生産性を実現することを決断した。
これは、困窮した企業が節約のために人員を削減するケースではない。2025年第4四半期、Blockの総粗利益は2億8700万ドルで前年同期比24%増、通年の粗利益は1億3600万ドルを突破した。Cash Appの粗利益も前年同期比33%増、調整後一株当たり利益は0.65ドルと、アナリスト予想を上回った。
決算は好調で株価は急騰し、その後40%の人員削減が行われた。
この論理は、これまで誰もやったことのないものだった。
Blockの従業員数は2019年末の3835人から、パンデミック拡大期に1万人を超えた。ドーシーは手紙の中で、これは誤った成長判断だったと認めている。AIの登場により、彼は誤りを修正する機会を得た。弱体化したわけではなく、AIによって企業はより強くなることができると。彼はこれを「インテリジェントネイティブ」と呼び、AIをコア生産力の単位とした企業の再設計を意味している。
02 AIはすでにあなたの仕事を代行し始めている
ドーシーが言う「インテリジェントツール」とは、ChatGPTのような汎用インターフェースを指すのではない。
Blockは過去2年間、密かに「GOOSE(グース)」という内部AIエコシステムを構築してきた。これはモデルコンテキストプロトコル(MCP)を通じて、社内の150以上のソフトウェアやデータサービスと深く連携し、リアルタイムの財務データを読み取り、コードベースや請求システム、データダッシュボード上で直接操作を行うことができる。単なるテキスト提案の生成にとどまらない。
数字がすべてを物語る:カスタマーサポート分野では、AIはCash Appのケースの約60%を処理し、エンジニアリング分野では、2025年9月にAI支援のプログラミングツールを導入して以来、エンジニア一人当たりの生産コード量が大幅に増加している。
2025年第3四半期、Blockは「G2」と呼ばれるGOOSEを基盤としたエージェント化インターフェースをリリースした。これにより、従業員の働き方が一変した。残留した6000人の従業員は、もはやデータ入力や初歩的なコーディング作業を行わず、G2のインターフェースを通じてAIクラスターに複雑なタスクを指示するだけとなった。法務書類の審査、HRの初期スクリーニング、動画資産の初剪などもG2が担当している。
人は「オペレーター」から「キュレーター」へと変わった。
新たに導入された「Neighborhoods(ネイバーフッド)」機能も、このモデルの効率性を裏付けている。概念からリリースまでわずか6ヶ月未満で実現した。ドーシーの構想では、6000人とGOOSEを組み合わせることで、以前の1万人では不可能だったことを成し遂げられる。この論理こそが、今回の大規模裁員の根底にある。
03 「優しい刃」
マスクが2022年にTwitterを買収した後の裁員と比べ、多西の手法はまったく異なる。
マスクのやり方は、突然システムをロックし、「ハードコア」な通達を出し、法定最低補償だけを提供し、その後多くの訴訟を引き起こすものだった。
一方、多西のやり方は、20週間分の基本給与の補償(勤続年数に応じて1週間ずつ追加、業界標準は通常12〜14週間)、6ヶ月の完全医療保険、5000ドルのキャッシュ移行補助、株式オプションの権利確定期間を2026年5月末まで延長、さらに従業員は会社支給のパソコンやモバイル端末を保持できる。
このプランは、テック業界の裁員史上ほぼ最高水準だが、この刃は鈍くはない。
《WIRED》や内部匿名プラットフォームのBlindのフィードバックによると、Blockの内部文化は「崩壊の瀬戸際」にある。多西は一部従業員を「いい加減にやっている」と非難し、構造的最適化を個人のパフォーマンスに帰しているため、残留社員の不安が広がっている。残った社員は、仕事量が倍増する一方で、次の「AIパフォーマンス評価」が自分を指すのではないかと常に気にしている。
寛大な退職金は、集団訴訟のリスクを排除しつつ、多西が公の場で「立派な雇用主」のイメージを維持する助けとなった。外部の注目は、AIの効率性に関する物語に集中し、4000家庭の生計喪失という現実から目を背けさせている。この「冷徹なビジネス判断」が、「感情的な全員宛ての手紙」に包まれ、複雑なマネジメントの一例となっている。
04 なぜウォール街は裁員を歓迎するのか
資本市場の論理は、誰よりも早く動く。
株価はアフターマーケットで23%急騰し、時価総額は約24億ドル増加した。ざっと計算すると、一人減らすごとに約60万ドルの帳簿価値を生み出していることになる。
さらに長期的な見積もりは驚くべきものだ。2026年、Blockは約122億ドルの粗利益を見込み、従業員数は6000人未満で、一人当たりの粗利益はほぼ200万ドルに達する。これはGoogleやMetaなどのトップテック企業を大きく上回る数字だ。
米連邦準備制度が高金利を維持し、テック企業の資金調達が引き締まる2026年、資本市場の評価軸は「成長プレミアム」から「利益プレミアム」や「単位生産性プレミアム」へと変わった。Blockは「40原則」(売上成長率と利益率の合計が40%以上)を超え、Q4には79億ドルの株式買い戻しを完了、年間では230億ドルの買い戻しを行った。
このシナリオを理解している取締役会も多い。
Blockの事例は、金融テクノロジー業界全体に人件費構造の再評価を促す可能性がある。「AIの名の下に」行われる裁員は、非常に魅力的な戦略スクリプトとなりつつある。CEOたちが「AIによる代替裁員」を発表するだけで20%以上の株価上昇を得られるなら、大規模なホワイトカラーの解雇も、景気後退を理由にしなくても済むだろう。
05 小結
「弱点による裁員」から「強さによる裁員」への変化は、ホワイトカラーの雇用安全に前例のない挑戦をもたらしている。Blockは、その先駆けの一つにすぎない。
ある企業が従業員数を40%削減しながら株価が逆方向に急騰したとき、市場に明確なシグナルを送っている:将来の企業評価において、人の数はもはや資産ではなく、むしろ技術による最適化を必要とする「運用の摩擦」と見なされる可能性がある。
多西の大博打が成功するかどうかは、残った6000人の社員が本当にGOOSEを操れるか、AI支援のコードが複雑なシステムの中で時間の試練に耐えられるか、そして極限まで効率化された企業が引き続きイノベーションの速度を維持できるかにかかっている。
答えは、数年後にならないとわからないだろう。
しかし、この実験はすでに始まっており、終点がどこにあるのか誰も知らない。